7月12日ツール・ド・フランス結果
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第100回ツール・ド・フランスは、7月12日にツールからサンタマン・モントロンまでの173kmで第13ステージを競い、英国チャンピオンのマーク・カヴェンディッシュ(オメガファルマ・クイックステップ)がゴールスプリントでマイヨ・ベールのペーテル・サガン(キャノンデール)を下して今大会2勝目を上げ、ツールでの区間通算優勝回数が25勝になった。
フランスを斜めに南下する平坦ステージは、強い横風の影響で思わぬ展開となった。ゴールまで残り31kmで、先頭のマイヨ・ジョーヌ集団からアルベルト・コンタドールを含めたチームサクソ・ティンコフの選手たちがまさかのアタックを仕掛け、14選手が先行。カヴェンディッシュはこのアタックに加わって区間優勝した。先行した14選手にはベルキンのローレンス・テンダムとバウケ・モレマも加わっていた。マイヨ・ジョーヌ集団は1分9秒遅れでゴール。英国のクリストファー・フルーム(スカイ)は総合首位の座を守ったが、ライバルたちにタイム差を縮められてしまった。序盤には横風が吹き荒れるなか、逃げを吸収しようとオメガファルマ・クイックステップがはげしく先頭を引いたため、56km地点で集団が3つに分断。このタイミングで前日まで総合2位だったアレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム)は、不運にも車輪交換でマイヨ・ジョーヌ集団から離脱し、そのまま復帰することができなかった。彼とチームメートのルイ・コスタは10分近く遅れてゴールし、総合争いからも脱落した。
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第13ステージは前日の落車で肩甲骨を骨折したノルウエーのエドワルド・ボアソンハーゲン(スカイ)が出走せず、181選手がスタート。快晴だったが、強い横風にさいなまれた一日だった。2km地点から6選手がアタックして逃げ続け、最大3分50秒差を付けた。この逃げを追うために、オメガファルマ・クイックステップの7選手が先頭を激しく引いたため、56km地点で集団は3つに分断。第2集団にオメガファルマ・クイックステップの最大のライバルであるアルゴス・シマノのマルセル・キッテルや、世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(BMC)が取り残され、第3集団にはライダー・ヘシェダール(ガーミン・シャープ)、ダミアーノ・クネゴ(ランプレ・メリダ)が入っていた。90人ほどになったメイン集団は77km地点の丘で逃げていた6人を吸収。その時点でキッテルの集団は50秒遅れていた。
モビスターチームは全員が先頭集団に入っていたが、84km地点の補給所で不運が待ち構えていた。補給を受けるために集団ではブレーキがかけられ、他の選手の自転車がバルベルデの後輪にぶつかって破損。彼はすぐにチームメートのホナタン・カストロビエホから車輪を借りて交換した。バルベルデはチームメートとともに30秒の遅れを取り戻そうと追走を試みたが、集団の先頭ではオメガファルマ・クイックステップとベルキンがスピードをゆるめずに引き続け、その差は縮まるどころか開く一方だった。後方からはキッテルの集団が近づいていたたため、バルベルデたちはこれを待って合流し、追走を再開した。メイン集団では中間スプリント地点でさらにスピードが上がったが、アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル)を先頭に通過した後は、スピードは少しゆるくなった。ゴールまで残り51km地点で、バルベルデはメイン集団とのタイム差を42秒にまで縮めたが、残酷な横風はさらに強く吹きつけ、彼らの行く手を阻んだのだ。しかもメイン集団を引くオメガファルマ・クイックステップのアシスト選手たちは、北のクラシックで強い風には慣れている選手が揃っていた。ゴールまで残り40kmで、バルベルデはすでにメイン集団に2分近く離されていた。
メイン集団の先頭では、残り31km地点でオメガファルマ・クイックステップ列車にチームサクソ・ティンコフ列車が手助けを始めたかと思うやいなや、猛烈な加速でアタックし、先頭にいた14選手が先行する形になった。チームサクソ・ティンコフはコンタドール、ダニエーレ・ベンナーティ、ロマン・クロイツィーゲル、ニコラス・ローチ、マイケル・ロジャース、マッテーオ・トザットの6人がこのグループに入っていた。オメガファルマ・クイックステップはカヴェンディッシュとシルバン・シャバネル、ニキ・テルプストラの3人、キャノンデールはサガンとマチエイ・ボドナルが入り、ベルキンは総合上位のモレマとテンダムが入っていたため、マイヨ・ジョーヌ集団ではこの先頭グループに誰も入れられなかったカチューシャとロット・ベリソルが先頭を引いて追走した。しかし、チームサクソ・ティンコフの精鋭たちがチームTTのように加速したため、その差は無情にも開いていった。その間にも、後方ではバルベルデの集団がどんどん遅れていた。ゴールまで残り5kmで、14選手とマイヨ・ジョーヌ集団のタイム差は1分にまで開いていた。先頭では、フラム・ルージュを目前にテルプストラがアタック。ボドナルがこれを鎮圧したが、シャバネルがカヴェンディッシュの最後の水先案内人をつとめ、最後は先頭に立った英国チャンピオンが難なく先頭でゴールラインを通過した。
「表彰台に上がったのはボクだけだけど、今日はチーム全員が上るべきだった。みんなまったく信じられないくらい働いてくれたよ。とても難しく、ナーバスなステージだった。でも最後は勝ててとても興奮した。勝てて本当にうれしい。数日間辛い日がつづいた後で、もう一度表彰台に上がれるのは素晴らしいよ」と、区間優勝したカヴェンディッシュは喜びを語っている。ツール区間通算25勝は、フランスのアンドレ・ルデュックと並んで歴代3位の記録だ。彼はこれから歴代2位のベルナール・イノー(フランス)が持つ28勝の記録に挑むことになる。ちなみに歴代1位はエディ・メルクス(ベルギー)の34勝だ。
この日、マイヨ・ジョーヌに対して思いがけず1分以上の差をつけることができたコンタドールは「今日のステージにはとても満足している。もしスタート前に、今日はリーダージャージに1分10秒の差を付けられると誰かに言われても、ボクは信じなかっただろう。チームはまったくすごかった。最初はバルベルデが不運に見舞われたので、ボクたちは動かず、先頭は引かないと決めた。けれど最後には、我々のチームはとても強いが、他の選手たちは手こずっていることに気がついて、アタックすることにしたんだ。最初のアタックでは、ベンナーティがバイクのように走った。それで集団は粉々になってしまったのさ」と、語っている。「3分57秒が2分45秒に変わっても総合では大差はない。ボクたちはまだアルプスで攻撃を続けることに集中するよ。このツールは厳しいがまだ終わってはいないし、たくさんのことが起こり得る」
一方、総合争いから大きく脱落してしまったバルベルデは「ただ純粋に不運な日だった。それ以外にはない。我々は前にいて、気を配り、自信を持ち、今年のツールでいつもしていたのと同じようにしていた。けれど肝心な場面で、不運がボクの後ろから誰かに衝突させて、後輪を壊させてしまった。避けることはできなかった。チーム全員がボクのために止まり、もう少しで追いつくことができそうだった。けれどベルキンやヨーロッパカーのようなチームが激しく引いたんだ…これが自転車レースというものだ。あるときは勝つが、あるときは負けるのさ」と、この日のレースを振り返った。「我々は戦い続けなければならず、落ち着いたままでいなければならない。ツールの道程はまだ長い。レースはきっと大きく変わるにちがいないし、変わるだろう。我々はまだキンタナが総合で上位にいる。まだ長い1週間があり、おそらくリーダージャージを競うことはできないだろう。けれど我々は、集団にいくらかの痛みを与えることができる。今日の攻撃のあとで、我々がどんなことを計画するか見ていてくれ。キンタナが我々にとって総合で最高位の選手であり、我々はそう決めたなら彼を援護する。けれど表彰台を狙うために他の選手を傷つけるチーム戦略も取れるんだ。まだ山岳ステージがたくさん残っていて、多くのことが起こり得るのさ」