東武東上線脱線 台車に事故前から亀裂 見過ごされ運行か
今年5月に東京都板橋区の東武東上線で起きた脱線事故で、事故車両の台車に脱線前から亀裂が生じていたことが関係者への取材で分かった。亀裂が見過ごされたまま運行が続けられ、拡大して脱線につながった可能性がある。国の運輸安全委員会もこうした状況を把握し、経緯を調べているとみられる。
運輸安全委や東武鉄道によると、事故は中板橋駅近くで5月18日昼、成増発池袋行き上り普通電車(10両編成)の前から5両目の車軸4本のうち、後ろの2本が脱線した。直後の調査で、この2本を支える台車枠の側面に長さ15センチ、最大幅12ミリの亀裂が見つかった。
関係者によると、この亀裂の下部にさびが生じていた。亀裂ができた後、風雨などに一定期間さらされたためらしい。当初は小さかった亀裂が広がって、台車のバランスが崩れたため、脱線が起きた可能性がある。
亀裂の発生場所は鋼鉄製の台車枠と補強用鋼材の溶接部分に近く、金属疲労が起きやすいという。運輸安全委は亀裂発生の原因や時期などを慎重に調べている。
事故車両は1989年10月製造。東武鉄道は、国土交通省令に基づく8年ごとの全般検査(全部分解)を2009年11月、4年ごとの重要部検査(重要部分解)を13年5月、3カ月ごとの検査を今年3月に行い、6日ごとの自主的検査は5月16日に実施していた。これらの検査が適切に行われていたかどうかもポイントになりそうだ。
脱線は枕木の傷などから、中板橋駅を出てすぐのポイント付近で発生したことが判明している。駅発車直後に運転士が異常を感じて非常停止させ、乗員・乗客約400人にけがはなかった。
事故後、東武鉄道は事故車両と同型の198両を一斉に緊急点検したが、問題は見付からなかった。