特集>仙石線開通90周年 昭和と平成、二つの時代を快走


JR仙石線(約50キロ)仙台-石巻間が1928(昭和3)年11月22日に開通し、90周年を迎えた。

 県内第2の都市 石巻と、東北の中心都市 仙台が直接結ばれたことで、都市機能の充実、通勤通学の利便性向上などに貢献してきた。懸案事項だった全線複線化には至っていないものの、時間短縮やトイレの設置がかなっている。

<戦争、震災を乗り越え復旧>

 前身は宮城電鉄。細倉鉱山などの余剰電気を利用し、25年に仙台-西塩釜間で開通。当初は観光電車で、おしぼりの提供や釣り大会などのイベントを会社が主催して実施していた。

 太平洋戦争最中の44年、矢本や多賀城など沿線の軍事施設との関係から国鉄に買収され、国鉄仙石線になった。民営化により、JR東日本が運行している。

 東日本大震災では、海岸に近い東松島市の小野、野蒜、東名、陸前大塚の4駅が甚大な被害を受けるなどして一時不通となった。

 野蒜と東名の2駅は高台に移設され、まちづくりと一体となった復旧により、2015年5月30日に全線開通した。全線再開に合わせ、東北線に乗り入れる仙石東北ライン(ハイブリッド気動車)も運転を開始した。翌年の3月には、新興住宅地・石巻市新蛇田地区に新駅「石巻あゆみ野駅」が、04年の小鶴新田駅仙台市宮城野区)以来12年ぶりに誕生した。

 石巻は漫画を生かした街づくりに取り組んでおり、アニメのキャラクターをラッピングした「マンガッタンライナー」が03年3月に導入され、観光振興に一役買っている。

 90年の歴史の中で画期的だったのは、仙石東北ラインに加え、非電化の石巻線石巻-女川間への乗り入れで、沿線住民の悲願だった仙石東北ラインの直通運転が16年8月に始まった。

 戦争、震災などを乗り越えてきた仙石線は、開通100年に向け、沿線住民のさまざまな思いを乗せてさらに快走する。

■佐藤正幸石巻駅長あいさつ

 仙石線仙台~石巻間は22日、開通90周年を迎えました。戦争や東日本大震災など数々の激動を乗り越え、現在に至ることができました。地域の皆さまの温かいご支援があったからこそであり、心から感謝申し上げます。今後も鉄道の使命を果たしながら震災復興の一助を担い、地域の皆さまと共に歴史を刻んでいきたいと考えております。引き続き、倍旧のお引き立てをお願い申し上げます。


<日本初の地下鉄>

 仙石線は、旅客線では日本初の地下鉄といわれている。1927(昭和2)年に浅草と上野駅を結んだ現在の東京メトロ銀座線が最初の地下鉄として一般的に知られているが、25(大正14)年に仙台と西塩釜間で開通した仙石線の前身、私鉄宮城電気鉄道の地下駅・宮電仙台と東七番丁間(約400メートル)が地下鉄道路線として存在した。

 仙台駅のプラットホームのデザインは、ニューヨーク市の地下鉄77丁目駅(1918年開業)を参考にしたという。アーチや壁面が薄緑色、だいだい色で塗られるなどモダンだった。

 仙石線という名称は、44年の国有化後に付けられた。その後、全区間が地上となったが、2000(平成12)年に仙台-陸前原ノ町間が地下化され、仙台駅からあおば通駅まで延伸。仙石線は長い年月を経て、再び一部区間が“地下鉄”となっている。

【歩み】
1925(大正14)年 宮城電気鉄道が仙台―西塩釜間を開業
 28(昭和 3)年 仙台―石巻間全通
 29(   4)年 鹿妻駅新設
 32(   7)年 石巻を宮電石巻に駅名を改称
 39(  14)年 宮電山下―釜(石巻港)間の貨物線開業
 44(  19)年 宮城電鉄が国有化、仙石線と線路名を制定
 59(  34)年 石巻―仙台間快速電車運行開始
 83(  58)年 仙台―石巻間ノンストップ特別快速新設
 87(  62)年 東矢本駅新設。国鉄分割民営化
 90(平成 2)年 石巻駅舎を石巻線の駅舎に統合
2000(  12)年 野蒜―陸前小野間の鳴瀬川橋りょう架け替え工事完成
         仙台―陸前原ノ町間を地下化
         あおば通―仙台間を延伸開業
 11(  23)年 東日本大震災津波被害で全線不通
         東北線松島駅に接続する形で、
          松島―石巻間を仙石線経由の代行バス運転開始
 15(  27)年 全線運転再開、同時に仙石東北ライン開業
 16(  28)年 陸前赤井―蛇田間に石巻あゆみ野駅を新設
         女川駅まで直通運転乗り入れ開始

   ◇

石巻観光協会長・後藤宗徳さん

 石巻圏域住民にとって、仙石線は欠かせない存在であり、大動脈が90周年を迎えたことは喜ばしいことです。観光振興、交流・定住人口の増大にも大きな役割を果たしてきました。観光協会としても、次の100周年に向け、インバウンドのお客さんを含む観光客をさらに誘致するため、食に関する企画やイベント列車を走らせるなど、JRと協力し、石巻地域を盛り上げる努力をしていきたい。


■山下中吹奏楽
  部長・雫石晴和(はな)さん(13)、副部長・小野寺梓さん(13)

 仙石線は、演奏会に出掛けるときに利用するなど、私たちにとって身近な存在です。特に「マンガッタンライナー」は石巻を全国にアピールできる自慢の電車で大好きです。車窓から眺める四季折々の景色も好きです。

 今回、沿線の学校という縁で、90周年の式典で祝賀演奏ができることはとてもうれしく、吹奏楽部としても誇りに思っています。思い出に残るような演奏をして式を盛り上げたい。

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東日本大震災後、全線開通に合わせ東北線に乗り入れた仙石東北ライン。野蒜-小野間を快走する下り一番列車=2015年5月30日午前7時5分ごろ



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