おおさか東線開業で人の流れはどう変わるか
ここでは平成最後の新線開業となる同区間の現状をお伝えするとともに、その効果などを考えてみたい。
新大阪と奈良方面を結ぶ新線
このルートの大半は、もともと城東貨物線という貨物専用線が走っており、ここに旅客列車が走れるよう駅の新設や複線化が行われている。建設主体は大阪府や大阪市、JR西日本などが出資している大阪外環状鉄道株式会社で、完成後は同社の施設をJR西日本とJR貨物が借り受け、運営する形となる。
残る北区間は、南区間が開業する半年前の2007年11月に着工。工事は(1)新大阪駅におおさか東線用のホームを増設する工事、(2)新大阪駅―城東貨物線との合流地点まで線路を新設する工事、(3)城東貨物線を複線化する工事、(4)鴫野(しぎの)―放出で学研都市線の移設を伴う工事、の4つに大きく分けられる。
特徴ある「南吹田駅」
同じく、前回は高架橋が途切れた状態だった南吹田駅の先も完成しており、その先の神埼川橋梁へとつながっていた。神埼川橋梁は長さ171mの鋼製トラス橋で、列車はその先に設けられた神埼川信号所で城東貨物線と合流する。
一方、おおさか東線でもっとも北に位置するのが南吹田駅である。北区間に新設される他の3駅と同様、8両編成が停車できる対向式ホーム2面を備えており、それぞれのホームとコンコースの間はエレベーター各1基とエスカレーター各2基(上り・下り)で結ばれている。
また、南吹田駅は前後にあるJR京都線と神崎川の堤防を越える必要があるため、他の駅と比べてホームの位置が高く、階段やエスカレーターも長いものになっている。半径約500mの曲線上にあるため、車掌用のホーム監視カメラが設置された一方、ホームドアの設置は見送られた。
コンコースやホームの随所にも、水田の稲穂をイメージした黄金色やオレンジ色があしらわれ、アクセントになるとともに列車に乗っていてもどの駅に停車しているかがわかるようになっている。
また、階段部分などのガラス壁には吹田の特産品であるクワイを模したイラストが描かれた。
開業で南吹田エリアの利便性向上
駅の外では、ロータリーをはじめとする駅前広場が整備の真っ最中。周辺にはコンビニエンスストアを筆頭に商業施設が増え始め、にわかに活気づいてきた。
吹田市は東洋一と言われた吹田操車場がかつて存在し、また現在も吹田総合車両所や吹田機関区があるなど、古くから鉄道の街として知られている。現在は鉄道会社6社が15駅を営業しているが、この南吹田地区には駅がなく、公共交通の空白地帯だった。城東貨物線も貨物列車が素通りするだけで、地元には何のメリットもなく、旅客線化と駅の設置は長年の悲願だった。
新駅の開設で沿線エリアが便利になるのはもちろんだが、おおさか東線にはもう1つ重要な役割が期待されている。
それは、既存の鉄道路線との新たなネットワーク形成だ。今回新設される4駅のうち2駅が、既存路線と近接している。南区間を含めた全体では、両端の新大阪・久宝寺を含めた14駅中10駅で、合計10路線への乗り換えが可能(改札外乗り換えを含む)となる。
従来は、大阪市中心部まで出て乗り換える必要があったことから、所要時間や運賃面はもちろん、混み合う列車に乗らずに済むというメリットも大きい。逆に、こうした利用者がシフトすることで、大阪環状線などの混雑緩和にも寄与するだろう。
また、奈良と新大阪を直結できるという点にも注目が集まっている。言うまでもなく国内有数の観光地である奈良は、しかしながらアクセスが決して便利だとは言えず、特に西日本各地から訪れるにはいささか不便な場所であった。
新大阪―奈良間に快速列車設定
この日の記者会見でJR西日本の川井正大阪支社長は「うめきた新駅への乗り入れや新大阪―奈良間の特急列車運転について、現時点で具体的な検討はしていない」と話したが、もし実現すれば梅田エリアにもダイレクトアクセスが可能になり、その効果は計り知れない。