赤い新特急、快適さで差別化 近鉄名阪、20年春投入



名古屋と大阪を結ぶ近鉄の「名阪特急」に二〇二〇年春、座席の間隔を北陸新幹線の最上級車両「グランクラス」並みに広げた新型が投入される。圧倒的な速さを持つ東海道新幹線と差別化し、快適さに専念した独自路線は、二七年に開業するリニア客の取り込みも狙っている。
 「力強さ、華やかさ。新しくなったな、と一目で分かってもらえる色だと思います」。イメージ図を手に、近鉄の鉄道設計技士岡野友紀さん(45)が自信ありげに語った。現在の主力の白い「アーバンライナー」の印象を一新する真っ赤な車体。「特に意識したわけではない」そうだが、名古屋近郊で「赤い電車」としておなじみの名鉄のお株を奪いそうな色だ。
 六両か八両編成で、先頭と後尾の計二両が「ハイグレード車両」。電動リクライニング付き本革張りの座席が三列に並ぶ。席の前後の間隔は、現行より二十五センチ広い百三十センチで、グランクラスと同じ国内トップレベルになる。
 普通車両でも、新幹線のグリーン車並みの百十六センチ。背もたれを倒しても後ろの席に影響しない「バックシェル」を全席に備え、乗客に気を使わせない。海外旅行客らのスーツケースが置ける大型ロッカーと、無線LAN設備も設ける。
 名阪特急の近鉄名古屋大阪難波の最短二時間五分に対し、東海道新幹線の名古屋-新大阪は最短四十七分。新幹線も二〇年度に新型「N700S」を投入するが、JR東海幹部は「今のグリーン車よりぜいたくな車両を造る予定はない」という。近鉄の広報担当者は「徹底的にくつろぎの質にこだわる。勤勉で、慌ただしい移動をしがちな日本人に、豊かな二時間を過ごしてもらいたい」と違いを強調した。
 近鉄の分析では、名阪特急の利用は、観光客が三割、コンサートなどイベント客が二割、ビジネス客が二割で、残りがその他。ピークはバブル景気の真っただ中の一九九〇年度で二百五十万人だったが、沿線人口の減が響き、二〇一六年度は百八十万人に減った。
 二七年に東京・品川-名古屋間で開業するリニア中央新幹線に、回復の起爆剤としての期待がかかる。当面は関西に直通しないため、西へ向かう客は必ず名古屋駅で一度、列車を降りる。岡野さんは「名阪特急は十分、魅力的な選択肢になれる」と話した。
 (中野祐紀)
 <近鉄の名阪特急> 1947年10月8日に運転を開始した。64年に東海道新幹線が開業する前は、国鉄特急とスピードを競った時代も。57年の列車公衆電話とシートラジオ、58年の2階建て特急電車「ビスタカー」導入は日本初とされる。新型の投入は2003年の「アーバンライナーネクスト」以来。名古屋-大阪の片道運賃は、現行最上級の「デラックス」で4770円だが、新型は未定。東海道新幹線「のぞみ」のグリーン車は8790円。

本革張りの座席が並ぶ「ハイグレード車両」のイメージ=近鉄提供
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