開発が進むみなとみらい線の混雑はどうなる? 横浜高速鉄道を直撃!>


筆者も毎朝通勤に使っている横浜高速鉄道みなとみらい線横浜駅では東横線に直通して東京方面に向かう上り線、元町・横浜中華街方面への下り線ともに、大変な混雑になっている。
 
 
キニナル投稿にもある通り、元町・中華街駅が最寄りの山下公園付近や、馬車道駅直結のタワーマンションの建設が進んでおり、みなとみらい線沿線はにわかに建設ラッシュを迎えている。

混雑は発展の証とはいえ、なるべくなら空いている電車に乗りたい!
みなとみらい線の混雑はこれからどうなる? 何か対策はあるの? そんな疑問をぶつけるため、横浜高速鉄道に直撃。今後の展望と対策をうかがった。
 
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左から、荒井さん、小島さん、高橋さんにご対応いただいた
 


元町・中華街駅から横浜駅方面の利用者は増える?

「朝の時間帯に一番混み合うのは、横浜駅から新高島駅の間。みなとみらい駅で多くの方が降車しています。馬車道日本大通りの官庁街に向かう方もおりますが、みなとみらい駅を利用する方が一番多いですね」と話すのは、経営企画課経営係長の荒井信章(あらい・のぶあき)さん。

みなとみらい線区間に限れば、現在は横浜方面に向かう上りよりも、元町・中華街方面に向かう下りの車両が混み合っているようだ。
一方、現在は比較的空いている元町・中華街駅から横浜駅に向かう電車もキニナル投稿にあるように、「沿線にマンションなどができれば、こちらも朝の時間帯は混み合う可能性があります。逆に、マンション建設は現在の下り電車への影響という意味では大きくはありません」。
マンションに建設の影響が大きいのは、やはり上り電車。東急東横線区間となる横浜駅から乗り込んでくる乗客も合流すれば、渋谷方面行きの混雑は相当なものになりそう。
 
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北仲エリアに建設が進む58階建てのマンション
 
馬車道駅に建設中のマンション「ザ・タワー横浜北仲」は、総戸数1176戸の高級住宅。もちろんすべての住民がみなとみらい線を利用するとは限らないが、馬車道駅からの乗客は数百人単位で増加が見込まれる。山下公園付近では、総戸数100戸ほどのマンションが複数建設中。こちらも始発駅である元町・中華街駅の乗客増加に影響するのは間違いない。

一方、下り電車の混雑はどうなっていくのか。
横浜駅から元町・中華街方面に向かう電車も年々利用者が増加中だ。最も混み合う朝の時間帯の混雑率は、2015(平成27)年度の82.1%から、2016(平成28)年度は93.9%に上昇(横浜~新高島駅間)。昨年度は集計中だが、今後もみなとみらい地区の開発に伴い、さらに上昇していくと見られている。

今後特に開発が進みそうなのが、横浜駅みなとみらい駅の間にある「新高島駅」周辺だ。



横浜駅からの混雑はどうなる?
 
 
新高島駅は、現在は各駅停車の電車しか停車しない、ちょっと地味な印象の駅。だが、周辺には京急電鉄本社や資生堂のグローバルイノベーションセンター、コーエーテクモゲームスの本社と音楽ホールの複合ビルなど、どんどん新しい建物ができている。そんな企業に勤務する人たちがみなとみらい線を利用することになれば、新高島駅利用者は爆発に増える可能性も・・・。

横浜高速鉄道でも、この新高島駅の行方については懸案事項になっているようだ。
 
 
経営企画課長の小島淳(こじま・あつし)さんによれば、「新高島駅については慎重な判断が必要だと考えています。利用者が増えることは間違いないので、増えた人でホームがあふれ危なくなる、あるいは混雑率が極端に上がるということがあれば、対策を検討しなければいけません」と話す。

新高島駅は、みなとみらい線の駅の中ではホーム幅が比較的狭い。現在は時折エスカレーターが混み合う以外は目立った混雑がない状況だが、開発が進んだ先はどうなるか分からない。

一つの解決策として、新高島駅に停車する電車を増やせば、電車内の混雑は多少抑えられる。ダイヤの改正にも関わるため、慎重に今後の推移を見極める考えのようだ。

時差通勤などの取り組みもスタート

みなとみらい周辺は、横浜駅からそう遠くなく、徒歩や自転車でも十分に移動できる距離でもある。特に新高島駅は、横浜駅西口から歩いても10分ほどで着いてしまう。

いっそ徒歩で通勤してもらったほうがいいのでは? と思えるのだが、「横浜高速鉄道としては、みなとみらい線を使っていただきたい。特に雨の時などは、電車での移動が便利なはず。『歩いたほうがいい』と思われないようにすることが課題の一つです」とのことだ。

そのためには、快適な通勤も含め、利用者へのサービスを拡充していく必要がある。
 
 
みなとみらい線は、東急東横線に直通。さらに渋谷駅から東京メトロ副都心線につながり、小竹向原(こたけむかいはら)駅から西武線各線、和光市駅からは東武東上線と、5社の路線がつながっている。便利な反面、人身事故などトラブルの影響なども伝わりやすくなる。

みなとみらい線の遅延に関しては、乗り入れている他路線での機材トラブルや事故などの影響もあります。人身事故が起きることもあるので、そうなるとみなとみらい線にも遅れが出てしまいます」と荒井さん。

乗り入れ路線の5社は定期的に運行に関する協議を行っており、今後も遅延防止や混雑解消に向けた対策を進めていく方針。直近では、来年2019年の3月にもダイヤを改正するために調整を行っているという。
 
 
運輸部運輸課の課長補佐で、運転指令長でもある高橋久(たかはし・ひさし)さんによれば、「指令員(路線全体の運行を監視・指示する役割)の教育なども行っており、相直5社ではダイヤ等の会議も開いています。連携することで、直通運転もスムーズな運行ができるようになります」と話す。

みなとみらい線の遅延や混雑に対しては、乗り入れの5社と密接に連携しながら解消に取り組んでいく必要がある。
 
 
とはいえ、こうした地道なサービス向上の取り組みは、いずれも混雑をすぐに解消する特効薬ではない。駅の利用者が注意できることはあるのだろうか。

「特に朝のラッシュ時には、進行方向後ろ側の車両への分散乗車をお願いしております。電車の後ろ側1、2号車は余裕があることが多いのです」と高橋さん。

都内の通勤電車は200%近い混雑率を記録する路線もある中で、みなとみらい線の混雑は100%以内。数字で見た混雑はそこまでではない。数字以上に混み合って感じるのは、「みなとみらいや馬車道の駅構造上、階段やエスカレーターに近い電車の前方に乗る人が集中しているのが一因かもしれません。そのために横浜駅では東急電鉄の職員が分散乗車をお願いしています」という。
 
 
確かに朝の横浜駅みなとみらい線ホームでは、何人もの駅員が「後方の車両をご利用ください!」と必死に呼びかけている。ホーム上の位置によって混雑の度合いが大きく違うという状況のようだ。

さらに、混雑緩和に向けた広域的な呼びかけも進行中。みなとみらい線では、2018年7月9日からの平日9日間、東京都の時差通勤キャンペーン「時差ビズ」に初参加する。神奈川県の鉄道会社としては唯一の参加になるという。

時差ビズは、東京都が公共交通機関の混雑緩和を目的に2017年からスタートした時差通勤の推奨キャンペーン。出社や帰宅の時間をラッシュからずらすために協力企業を募り、鉄道会社が早朝の利用でポイントがたまる仕組みを用意するなど、ソフト面での混雑解消を目指している。
 
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東急線では早朝の電車を利用すればクーポンがもらえる(公式HPより)
 
みなとみらい線では、元町・中華街駅から出発する午前6時台の始発で、渋谷方面に向かう特急電車を走らせる。朝早い時間帯に「東京まで座れる特急」を利用することで、混雑緩和の一助にしたい考えだ。

また、今後は「東京方面への上り電車だけではなく、横浜の都心部へ向かう下り電車も混雑しているので、こちらでも導入を検討してもらいたいと関東運輸局に要望を出しています」と高橋さん。

現時点では県内での実施は検討されていないようだが、ラッシュ時の混雑回避のために、社会全体で協力しなければいけない時期が来るのは間違いなさそうだ。
 
 
大混雑の様子がたびたび伝えられる武蔵小杉駅のように、急速に開発が進むエリアでは交通インフラへの負担が大きくなりがちだ。開発の真っただ中にあるみなとみらい線は、その過渡期にあるともいえそう。
 
 
もちろん、ハード面での混雑対策・安全対策も進行中。みなとみらい線では2018年度中に日本大通り駅にホームドアを設置する予定で、2020年の東京五輪までに全駅にホームドアが作られる計画だ。

さらに荒井さんによれば「開業から15年を迎え、全駅舎のリニューアルも計画しています。トイレや公共空間などをより使いやすくサービスを向上させ、電車に乗るだけではない人が集まる場として駅を改良していきます」という。ソフトとハードの両面から、みなとみらい線の利便性向上を目指していくようだ。



取材を終えて

横浜高速鉄道によれば、みなとみらい線の利用者が沿線の開発とともに増加していくことは予想されていたという。それでも現時点での混み合いは「予定よりも多くの方に利用していただいている」状態。今後さらなる混雑が見込まれるだけに、その中でサービスを維持していけるかが課題と言えそうだ。

一方で、トラブルで電車が遅延することを防ぐために、「駆け込み乗車は絶対にやめてください。危険であるだけでなく、荷物がドアに挟まれるなどさらなる遅延の原因になってしまいます」とのお話もあった。

大都市が抱える満員電車にはなかなか特効薬が見つからないもの。その中でも快適に電車を利用していくためには、分散乗車や時差通勤など、利用する側が取り組むべき課題もあるのかもしれない。



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