名鉄の路線をすべて、廃止になったものも含めて描いた路線図だ。愛知・岐阜の2県に計42もの線が繋がっている。だが、実際にこのネットワークが実在したことはなかった。
歴史を知るファン・マニアにとってはたまらない路線図だ。
名鉄、昔日の栄華
現在の名鉄が発足したのは1935年。
中京地域の多数の中小私鉄が合併を繰り返して1つの企業となったもので、それらの路線が1社になったので今のような路線になっている。とにかく路線の数が多いので、話題になった架空の路線図でも細かく色分けしたり、模様を付けたりして識別しやすくしている。
これが「完全版」。カオストレイン(@chaostrain)さんのツイートより
こちらは実際の名鉄路線図(2019年2月現在)
名鉄岐阜駅から北の路線がすっぽりと消え、三河地方も途切れ途切れになっている。他にも支線が虫に食われたように消えているのがお分かりだろうか。これでも現在の総距離は444キロメートルで関西の近鉄、関東の東武に次いで長い距離だが、21世紀にローカル線の廃止が加速するまでは、総延長は500キロを超えていた。
冒頭の幻の路線図なら600キロをも超えていると思われる。
戦後は豊田線や知多新線、中部国際空港への空港線が開業したがそれ以上にローカル線の廃止が進んだ。岐阜や岡崎の路面電車、ユニークな犬山のモノレール線も廃止され、路線図だけをみたらかなりスリムに、悪く言えば貧相になってしまった。
もうひとつ、おもしろいのは駅の配置や駅名の決め方。
廃止になった駅も記入しているが、基本的に最新の駅名に沿っている中で、「近隣施設がなくなったりして実態にそぐわない駅は改名」したそうだ。広見線の学校前駅は命名由来の小学校が移転したため「市民グラウンド前駅」に。
知多新線には建設中止になった小野浦駅が記載されているなど、その芸の細かさがすごい。これだけの駅数の上に、なお統廃合で廃止されるなどして記載されていない駅もあるので、筋金入りのマニアでないとこの路線図の奥深さの全貌はわからないかもしれない。
とはいえ、カオストレインさんも「未成線などは割愛しました」とコメントしているように、この図でもカバーしきれなかったほど名鉄の歴史は深い。新名古屋駅が完成する前に名古屋市内にあった押切町駅、戦前から21世紀まで続いた高山線への直通列車の存在もこの図では書ききれなかった。