20トンの車体がつり上がる! 東京メトロ、近隣住民限定で「深川車両基地」10年ぶり公開


東京メトロ初の「近隣住民限定」車両基地見学会

 東京メトロが2017年6月4日(日)、東西線車両基地である深川車両基地(東京都江東区)の一般向け見学会を行いました。
車両工場のクレーンでつり上げられた東西線15000系電車の車体(2017年6月4日、中島洋平撮影)。
 同社では年に数回、千代田線の綾瀬車両基地(東京都足立区)などを一般に開放するイベントを行っていますが、今回の見学会は、車両基地周辺の住民のみを対象としたもの。近隣の町会と小学校2校から参加者を募集し、およそ600人の応募者から抽選で選ばれた300人が参加しました。
「綾瀬車両基地などで行うイベントは、ファンの皆さまに向けたお祭り的なものですが、今回の見学会は、ふだんお世話になっている近隣の皆さまに『あの大きな敷地や建物で何が行われているのか』を知っていただき、親しみを持っていただきたい思いで実施しました」(東京メトロ広報部)
参加者は午前と午後で150人ずつ。さらに3グループに分かれて見学。 車両基地内にある車両工場は、ギザギザの屋根が特徴。 留置線には東西線の車両が並ぶ。左から15000系、07系、05系05N系
 こうした、近隣住民のみを対象とした車両基地の見学会は、東京メトロでは初めての試み。そして深川車両基地の公開は、2007(平成19)年に東西線5000系電車の引退記念イベントが開かれて以来、10年ぶりだといいます。

「車体洗浄機」に子どもたち大興奮

 深川車両基地はおもに、日常的な点検を行う「整備場エリア」、電車を留め置く「留置線エリア」、そして自動車でいう車検にあたる大がかりな検査を行う「工場エリア」の3エリアに分かれています。
 整備場の建屋(ピット)は、2017年5月に新設されたばかりで、作業効率アップのため東京メトロ初の冷暖房付きピットになっています。ここでは、毎日の出庫前に行う「出庫点検」や、10日以内にいちどの「列車検査」、3か月以内にいちどの「月検査」が行われています。
2017年5月に新設されたばかりの整備場ピット。 05系の床下機器。 電車が車体洗浄機を通過中。
 電車に乗り込んで、自動車の自動洗車機にあたる、車体洗浄機を通過する体験も。「ゴオー」と高圧の水が噴き出すブラシを通過する際には歓声が上がりました。編成の端まで洗浄機を通過すると、こんどは反対方向に進み、もういちど洗浄機を通過。子どもたちは一斉に運転台の後ろに集まり、その様子を楽しんでいました。

「ワンハンドルマスコン」の運転台で操作体験

 留置線エリアでは、05系および15000系電車に乗り込み、運転台で機器類の操作体験が行われました。
 2010(平成22)年にデビューした新しいタイプの車両である15000系の車内では、「電車ってアクセルとブレーキのレバーがあると思っていたのに、レバーが1本しかないんですね」「はい、05系ではレバーが2本なのですが、15000系は『ワンハンドルマスコン』と呼ばれるタイプで、1本のレバーでどちらも操作します」と、保護者がインストラクターから説明を受けていました。
留置線の長さは400m以上あり、10両編成2本を1線に収容できる。 15000系電車の運転台でポーズ。 15000系の運転台はワンハンドルマスコン。
 そのとき突然、「ファーン!」と大音響が。運転台に立っていた女の子が、足元の警笛を鳴らすペダルを踏んでしまったようです。「びっくりしたねー!」と、車内は笑いに包まれました。

20トンの車体が吊り上がる! 車両工場へ

 車両工場は、4年以内にいちどの「重要部検査」と、8年以内にいちどの「全般検査」という、いずれも電車の各機器や部品を分解して行う、大がかりな検査が行われる場です。
 工場内には、台車(車輪などがある部分)が取り外された車体が並び、奥の「台車職場」と呼ばれる場所では、台車から分解された車輪や車軸がずらり。日々の走行で汚れ、塗装がはがれた台車もここで洗浄され、「台車塗装ロボット」によってきれいに再塗装されます。
高い天井から光が差し込む車両工場内。 「台車塗装ロボット」による塗装は映像で紹介。 車輪のボルト締めに使われる大きなレンチ。
 そのほか、工場内では実際の電車に使われているパンタグラフを、ボタンを押して上げ下げしたり、リフトカーと呼ばれる昇降機に乗って、車体の天井を上から眺めたりする体験、また、車輪回りの部品に異常がないかを確かめる「打音検査」の体験などが行われました。
「ボルトを金づちで叩いてみると、一部だけ音が違うでしょう。こうして音で、ボルトのゆるみを確かめるのです」と、インストラクターに教わりながら、子どもたちが実際に金づちで叩き、音の違いを注意深く確かめていました。

課題もある車両基地の公開 今後はほかの基地でも?

 天井近くに取り付けられた電動クレーンで車体を持ち上げ、台車と分離する実演も行われました。車体の重さはおよそ20トン。「電動、上げ!」の号令とともに、15トン吊りクレーン2台でその車体が高く持ち上がると、「おおーっ」と歓声が上がりました。
打音検査の体験。 パンタグラフの上げ下げを体験。 リフトカーで15000系の屋根上を眺める。
 3時間強の見学に参加した子どもたちからは、「パンタグラフの上げ下げが楽しかった」「洗浄機を通るときが面白かったけど……やっぱりぜんぶ楽しかった!」といった声が聞かれました。
 東京メトロは、「当社最大の車両基地である綾瀬車両基地では一般開放イベントの実績も多いのですが、そのほかの基地となると、参加者の動線確保など、公開には安全面の課題がともないます。今回はあくまで近隣の方に向け、300人限定という規模にしたことで可能になった側面もあります」と話します。今回の実績を踏まえ、ほかの車両基地においても同様に近隣住民へ向けた見学会を開催できるか、検討していくそうです。

応募者限定が京王、京成、北総、東急、東京メトロ、一般公開が東武、西武、小田急京急、相鉄、都営とイベントやってきてこんな感じで来ているだろう。近隣住民限定という枠だといろいろと優遇されるし問題なくやっていけているように見えますね。これを機に地域限定を回数を多くして積極的にイベントを開いてほしいものだ。


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