銀座線に特別仕様車登場 車内消灯も再現 「東洋唯一の地下鉄道」時代により近く


さらに昭和初期に近く

 東京メトロが2017年1月11日(水)、銀座線1000系電車の特別仕様車両を報道陣へ公開しました。
 浅草~渋谷間を結ぶ銀座線の車両は現在2種類ありますが、そのうち1984(昭和59)年にデビューした01系電車は今年度中に運転を終了し、すべての車両が2012(平成24)年にデビューした1000系電車に置き換えられる予定です。この01系にかわって導入される1000系電車のうち、最後の2編成は「特別仕様」とされ、それがこのたび公開されました。
その開業当時の車両がイメージされた銀座線1000系の特別仕様車両(2017年1月11日、恵 知仁撮影)。
 この特別仕様車両は、内外装のデザインが「銀座線が『東洋唯一の地下鉄道』だった時代のものに、さらに近づいている」のがポイントです。日本の地下鉄は1927(昭和2)年に開業した浅草~上野間、すなわち現在の東京メトロ銀座線が始まりとされており、当時、その地下鉄には「東洋唯一の地下鉄道」というキャッチコピーが使われました。
通常仕様の銀座線1000系電車(写真出典:東京メトロ)。
 銀座線の新しいほうの車両である1000系電車は、レモンイエローの車体色など、「東洋唯一の地下鉄道」が誕生した時代に同線を走っていた1000形電車をデザインのモチーフにして、登場しました。このたび姿を現した1000系の特別仕様車両は、内外装がより一層、その「東洋唯一」だった時代の1000形電車に近づけられています。

特に大きく変化 見るからに違う内装

 より「東洋唯一の地下鉄道」だった時代に近づけられた1000系電車の特別仕様車両、内装は特に大きく通常の1000系電車と変わっています。
「東洋唯一の地下鉄道」だった時代へ大きく近づけられた1000系特別仕様車両の内装(2017年1月11日、恵 知仁撮影)。
 通常の1000系電車は白系の壁など、いわば「現代の一般的な通勤電車」が内装の基本ですが、特別仕様車両は「東洋唯一の地下鉄道」だった時代の車両がイメージされた木目調です。
 あわせて、手すりや握り棒は真ちゅう色にされているほか、荷物棚や窓枠、床なども色を変更。つり革は往時の「リコ式」風です。東京メトロの担当者によると、ステンレス製の手すりや握り棒で真ちゅうの質感を出すのは苦労したとのこと。また車内に掲示されている製造者などを示す銘板も、右から左へ書かれています。

懐かしの「暗くなる車内」を再現

 この特別仕様車両では、懐かしい現象が再現されるのも大きなポイントです。
 かつて銀座線や丸ノ内線に乗っていると、室内灯が消えることがありました(銀座線では1993年までそうした車両を運行)。電車は線路上の架線から電気を取り入れ、走るものが多いですが、東京メトロ線のうち銀座線と丸ノ内線は線路の横にある「サードレール」から電気を取り入れる「第三条軌条方式」。そしてポイント(分岐器)を通過する際などに車両がサードレールから離れることがあり、そのときは電気を取り入れられないため、一時的に室内灯が消えることがあったのです。
特別仕様車両では、室内灯が消え、予備灯のみになるシーンを再現。室内灯を電球色にする機能も搭載される(2017年1月11日、恵 知仁撮影)。
 東京メトロによると、現在の車両は6両編成のどこかの車両がサードレールに接触していれば全車両の室内灯が消えないようになっているそうですが、特別仕様車両は、そこであえて消す機能を搭載。かつてのような「暗くなる車内」が再現されます。
 またかつて、そうした消灯時でも車両に搭載するバッテリーでオレンジ色の予備灯を点灯させ、完全には暗くならないようにされましたが、特別仕様車両はそれも再現。1両ごとに室内灯が消え、そして再び点灯していく現象も再現されます。
 ただこうした「演出」はイベント運行時のみで、普段は行われない予定です。

特別仕様車両は40分の2

 1000系電車の特別仕様車両、外装の違いとしてまず挙げられるのは、いわゆる「ヘッドライト」です。通常の1000系電車は2灯ありますが、それが往時の1000形と同様の1灯になっています。
窓の上下にある水平方向のラインが「ウインド・シル/ヘッダー」(2017年1月11日、恵 知仁撮影)。
 また、リベットを使っていた往時の1000形電車は、窓枠や出入口まわりの強度を保つため「ウインド・シル/ヘッダー」という補強部品を使用していました。特別仕様の1000系電車は、それを模擬したデザインになっているのも特徴です。
 このほか外装では、通常の1000系電車に対し、ラインカラー「オレンジ」の帯がない、運転台のある前面の黒い部分へ縦方向にレモンイエローのラインが入った、尾灯(テールライト)の形状などに変化があります。
 東京メトロによるとこの特別仕様車両は、銀座線で現在、「伝統×先端の融合」という路線コンセプトを軸にリニューアル工事を進めているなか、「伝統」のコンセプトに基づき、通常運行時、乗客に楽しんでもらうためと、各種イベントなどで活用するため、導入したとのこと。今年は1927(昭和2)年の「東洋唯一の地下鉄道」から90周年にあたるため、それに関連するイベントなどでの活用を考えているそうです。
「まず雰囲気を楽しんでいただければと思います」(東京メトロ 車両部設計課 松本耕輔課長)
 特別仕様車両の運行開始は、1編成目が2017年1月17日以降、2編成目が2017年3月中旬の予定。銀座線の車両は合計で40編成あるため今後40分の2、すなわち5%の確率で特別仕様車両に出会えるようになる計算です。

【写真】「日本初の地下鉄」車内と外観

「東洋唯一の地下鉄道」として登場した1000形電車の内装と外装。現在も東京都江戸川区の「地下鉄博物館」に保存されている(2007年、恵 知仁撮影)。
報道公開がついに行われ試運転が楽しみです。01も引退が迫りましたが事業車用として残してほしいです。
https://www.tetsudo.com/をクリック
鉄道コム