シカなどの野生動物と衝突したことによる鉄道のダイヤの乱れが増えている。国土交通省によると、この10年で3・5倍。個体数の増加が背景にあり、2時間あまりで動物4頭との衝突に見舞われた路線もある。遅れや車両故障による経済的損失は大きく、鉄道各社は対策に知恵を絞っている。
「午後6時46分、鹿が列車に当たった影響、8時14分、鹿が列車に当たった影響、8時44分、 猪(いのしし) が列車に当たった影響、9時4分、鹿が列車に当たった影響で一部の列車に遅れが発生」
国交省によると、全国の鉄道で動物の衝突などが原因の運休や30分以上の遅れは、昨年度616件に上った。近年増加傾向にあり、2008年度の176件から3倍超となっている。
衝突する動物の多くはシカだ。環境省によると、本州以南の16年度の個体数は推定272万頭。06年度から100万頭以上増えている。急激な増加は、毎年子ども1頭を生む高い繁殖力に対し、ハンターの数が追いついていないことが理由だ。1970年度には全国に約53万人いたが、高齢化などで2015年度は約19万人に減っている。
シカの生態に詳しい立正大学の須田知樹教授(野生動物学)は「生息域が拡大し、山林から人里に出てきてしまうケースが増えたと考えられる」と話す。
ある鉄道会社は、衝突が引き起こすダイヤの乱れや車両の修理などで年間数千万円の損失が生じることもあると説明する。