2018年ブルーリボン賞,ローレル賞


「最新技術で快適な旧型客車の再現」高いレベルで具現化

 2018年5月24日(木)、鉄道友の会が「ブルーリボン賞」と「ローレル賞」を発表。2018年の「ブルーリボン賞」には、JR西日本の「SLやまぐち号」に使う35系客車が選ばれました。
Large 180524 br2018 01 2018年の「ブルーリボン賞」を受賞したJR西日本SLやまぐち号」の35系客車(画像:鉄道友の会)。
 同車両は、観光キャンペーン「幕末維新やまぐちデスティネーションキャンペーン」にあわせ、2017年9月にデビュー。山口線を走る蒸気機関車牽引(けんいん)の臨時快速「SLやまぐち号」として使われています。
「SL全盛期の客車を復刻した新しいレトロ客車」(JR西日本)といい、昭和初期に製造された旧型客車の形式を踏襲(35系4000番台)しながらも、バリアフリー対応の多機能トイレや電源コンセントなど、最新の設備もあわせ持っているのが特徴です。
 5両編成で、定員は245人。車体は鋼製で、窓帯や屋根の形など、ベースとした車両の外観が可能な限り忠実に再現されています。車内は、かつての一等展望車を再現したグリーン車をはじめ、大型テーブルを備えたボックス席、売店、運転体験コーナーなど様々です。
 鉄道友の会は賞の選定理由として、「牽引される客車の確保は重要な課題」としたうえで、「最新技術で快適な旧型客車の再現」するという開発コンセプトを高いレベルで具現化した点や蒸気機関車列車を永続的に運行するためのひとつの方向性を示した点を高く評価したことを挙げています。
ブルーリボン賞」「ローレル賞」は、鉄道友の会が毎年1回、前年に日本国内で営業運転を始めた鉄道車両のなかから選定する賞です。同会会員の投票結果をもとに、選考委員会が利便性や快適性、環境対応、新技術の有効活用といった観点から車両を評価。「最優秀」と認められた車両には「ブルーリボン賞」が、「優秀」と認められた車両には「ローレル賞」がそれぞれ贈られます。今年の選考委員は9人、候補車両は18形式でした。

【写真】新しいけどレトロな客車車内

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「空気ばね式」採用

 2018年5月24日(木)、鉄道友の会が「ブルーリボン賞」と「ローレル賞」を発表。2018年の「ローレル賞」には、東武鉄道500系特急形電車、鹿児島市交通局7500形電車とともに、JR東日本E353系特急形電車が選ばれました。
Large 180524 br2018 11 2018年の「ローレル賞」を受賞したJR東日本E353系特急形電車(2015年8月、恵 知仁撮影)。
 E353系は2017年12月、中央本線の特急「スーパーあずさ」として営業運転を開始。2018年7月からは特急「あずさ」「かいじ」としても運行が始まります。
 これまでのE351系は「振り子装置(制御付き自然振り子)」を備えた車両でした。遠心力を利用して車体を傾斜させ、カーブを高速で通過できるようにしています。この装置により、山間を走りカーブが連続する中央本線でスピードアップが実現しましたが、複雑なメンテナンスが課題でした。
 新型のE353系は、車体の下にあるクッション状の「空気ばね」に空気を出し入れして車体を傾かせる方式を採用。車体の傾斜角はE351系の最大5度に対して、E353系は最大1.5度ですが、カーブの通過速度はE351系と同等といいます。
 外観は南アルプスの雪をイメージしたという白を基調に、「あずさ」伝統のバイオレットの帯を車体の肩の部分に配置。内装は普通車がブルー系、グリーン車がワインレッド系でまとめられています。
 鉄道友の会は賞の選定理由について、「斬新なデザインと高機能を備え、急曲線線区のスピードアップを担うホープであることを高く評価」したとしています。

【写真】E351系E353系、「スーパーあずさ」新旧車両

Large 180524 br2018 12 特急「スーパーあずさ」の新旧車両。左が新型のE353系、右が2018年春に引退したE351系(2017年6月、恵 知仁撮影)。


「既存の特急車とは一線を画する車両」

 2018年5月24日(木)、鉄道友の会が「ブルーリボン賞」と「ローレル賞」を発表。2018年の「ローレル賞」には、JR東日本E353系特急形電車、鹿児島市交通局7500形電車とともに、東武鉄道500系特急形電車「リバティ」が選ばれました。
Large 180524 br2018 21 2018年の「ローレル賞」を受賞した東武鉄道500系特急形電車「リバティ」(画像:鉄道友の会)。
 500系東武鉄道の26年ぶりの特急車両として、2017年4月にデビュー。3両編成を2本つないだ6両編成で出発し、途中で編成を分割して複数の目的地に向かうなど、柔軟に運転できるのが特徴です。
 現在は、浅草駅から日光や鬼怒川方面に向かう「リバティけごん」「リバティきぬ」、野岩鉄道会津鬼怒川線会津鉄道会津線に乗り入れて浅草駅と会津田島駅福島県南会津町)を結ぶ「リバティ会津」、浅草~大宮間などを結ぶ「アーバンパークライナー」などが500系で運転されています。
 鉄道友の会は「東武鉄道がこれまでにない運行形態を実現するにあたり、既存の特急車とは一線を画する車両を開発することによって、間もなく90年に達する特急運転網の歴史に新たな風を呼び込んだことを高く評価し、ローレル賞に選定」したとしています。

【写真】駅長・区長らも出席 「リバティ」浅草発一番列車の出発式

Large 180524 br2018 22 運行開始日に開かれた「リバティ」浅草発一番列車の出発式。浅草駅長、台東区長、墨田区長らが参加した(2017年4月21日、恵 知仁撮影)。


「超低床式路面電車の新しい構造を実現」

 2018年5月24日(木)、鉄道友の会が「ブルーリボン賞」と「ローレル賞」を発表。2018年の「ローレル賞」には、JR東日本E353系特急形電車、東武鉄道500系特急形電車「リバティ」とともに、鹿児島市交通局7500形電車「ユートラムIII」が選ばれました。
Large 180524 br2018 31 2018年の「ローレル賞」を受賞した鹿児島市交通局7500形電車(画像:鉄道友の会)。
 7500形は2017年3月にデビュー。1000形「ユートラム」、7000形「ユートラムII」に続いて導入された超低床の路面電車車両です。ふたつの車体をつなげた連接車で、外観は「交通局カラー」とする太陽をイメージしたイエローと、芝生軌道をイメージしたグリーンを配置。前面はブラックとし、印象を引き締めたものとしています。
 床面の高さは、乗降口350mm、連接部390mm、台車上部465mmで、それぞれの高さは緩やかなスロープでつながっており、スムーズな車内移動が可能です。車体寸法は1000形とほぼ同じものの、運転室をコンパクトにしたことで、定員は10人多い68人としています。
 鉄道友の会は「7500形は超低床式路面電車の新しい構造を実現し、今後の新しい方向性が期待されます。これらの特徴を高く評価し、ローレル賞に選定」したとしています。


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